ウォーレン・バフェットは、投資家としての実績だけでなく、発言の一つひとつが市場参加者の思考を揺さぶる人物でもある。中でも刺激的なのが、少額資金なら年利50%で複利運用できるという趣旨の発言だ。これがもし本当ならば個人投資家はS&P500の平均リターン(11%前後)をありがたがっている場合ではない。

ただし、ここで重要なのは「バフェットが年利50%を保証した」わけではなく、条件付きでの話ということだ。そしてその条件は、ほとんどの人が普段意識しない資金規模の問題に集約されている。

発言の文脈:誤解されやすいが、論点はサイズの壁

講演会において質問者はまず、バフェットが過去に「100万ドル程度なら年利50%で複利運用できる」と発言したと地方紙に報じられたと触れ、その具体的な投資手法や市場の非効率性がどこにあるかについて尋ねた。

バフェットはまず「少し誤って引用されている」と前置きしたうえで説明を始めた。趣旨を完結にまとめると以下のようなものだ。

  • 資金が小さいほど高いリターンを狙える余地がある
  • 資金が大きくなるほど期待リターンは急速に低下する
  • 実際に100万ドルで年利50%を狙える人は6人ぐらいいると思う
  • しかし同じ人たちでも運用資金が1億ドルや10億ドルなら同じ利回りは無理だ

単純に1ドル150円で計算すると「1.5億円未満なら年利50%は可能」ということなので個人投資家には夢のある発言だ。

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイの運用利率は年利22%程度。規模が大きいからこそここまで下がってしまうが、もっと小規模なら小さな市場の歪みを拾って儲けていけるということなのだろう。

なぜ少額なら高リターンが可能なのか

バフェットは、少額で高リターンが狙える理由を「小さな証券」「小さな歪み」に限定している。

(1) 小型・流動性の低い領域は、歪みが残りやすい

巨額資金を運用する場合、投資対象の流動性が足りなくなることがある。その場合、買うだけで値段が上がり、売るだけで値段が下がる。これでは理論上の割安さがあっても実行できない。結果として、巨大資金は大型株や指数連動のような「大きくて深い市場」に吸い寄せられ、平均に近づくのだ。

一方で、少額なら小型株やニッチな証券でも十分に売買できる。そこには機関投資家が参入しづらい理由があるため、非効率が残りやすい。つまり、個人投資家が入り込める狩場が存在すると言える。

(2)小さな裁定(アービトラージ)や特殊状況はサイズに上限がある

バフェットは「株式市場には、たまに小さなアービトラージや市場のしわ(wrinkles)がある」と述べている。だが、こうした機会は金額のキャパが小さい。運用資産が1.5億円未満なら狩り取れても、15億円規模ではまったく足りない。だから資金規模が増えるほど機会は希少になり、利回りは落ちていく。

(3)能力圏内での徹底的な探索ができる

バフェットは「自分の能力圏の中で、理解できる小さな証券をすべて見ていけば」と言っている。ここが本質だ。年利50%は、魔法の銘柄ではなく、探索コストと分析力に対する報酬である。

ただし、次の一言が重要だ。

自分はもうそれを探していない。バークシャーで運用できる対象を探しているので、その手の小さな機会は全部対象外だ。

つまり、年利50%の可能性があると知りながら、バフェット自身はこの投資手法を採用していない。なぜならバフェットにはバークシャーという大規模な制約があるからだ。

「バフェットはやっていない」ことが意味するもの

ここから導ける結論は2つある。

1つ目は、個人投資家はバークシャーより自由度が高いということだ。少額なら、小型株や特殊状況など、巨大資金が入れない領域を攻められる。これは個人投資家にとっての構造的優位だ。

2つ目は、その優位は自動的には発動しないということ。バフェットは「宝探しの楽しみは君たちに残しておく」と言い、具体的な投資対象は教えてくれない。年利50%の世界は、簡単なスクリーニングで辿り着ける場所ではなく、探索と理解の結果として見つかる。

そしてチャーリー・マンガーの補足がさらに重い。

昔の方が簡単だった。今は難しい。もっと知る必要がある。

マニュアルをめくって、PER2倍の株を探すだけではもう無理だ。

昔のバフェット流バリュー投資のように、数字だけで明らかに安いものを拾う時代は終わった。今は市場が速く、情報が広く、単純な割安は消えやすい。だからこそ、年利50%という数字だけを見て「まだそんな世界があるのか」と夢を見るのではなく、「もしあるとして、それはどの領域に、どんな条件で残るのか」と捉える必要がある。

能力が高いなら年利50%は現実的

バフェットが「6人」と言ったように、年利50%を達成できるかどうかは投資家の能力によるということだろう。平均的な能力の投資家では不可能だ。

あくまで年利50%は、再現性のある手法として万人に開かれたものではなく、限られた能力を持つ投資家が、限られたサイズで、限られた機会を掘り当てて初めて成立する。

重要なのは、資金が小さいことは弱みではなく最大の武器になるということだ。

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