2003年、ウォーレン・バフェットがネブラスカ大学でしたスピーチを簡潔にまとめてみる。
投資の話だと思って見始めると、拍子抜けするかもしれないので注意。この講演で語られる中心は、銘柄選びのテクニックではなく、人生・仕事・投資に共通する「長期で負けないための設計」だ。
短期の勝ち負けは運に寄る。けれども長期の結果は日々の判断の積み重ねで決まる。バフェットが言うのは、まさにその判断をブレさせないための軸だった。
バフェットが語った重要ポイントまとめ
(1)会計はビジネスの言語だ
講演の中で繰り返し強調されるのが、会計はビジネスの言語だという考え方だ。これは投資家向けのアドバイスであると同時に、社会人としての武器の話でもある。
財務諸表を読むことができると次の差がつく。
- 景気や流行に振り回されにくい
- 売上や利益の増減の裏側にある構造が見抜ける
- 経営者の言葉を数字で検算できる
長期投資が結局は「ビジネスを買う行為」であるならば、言語を学ばない理由はない。投資をしない人でも会計が読めるとキャリアの選択肢が増える。
(2)新聞テストで判断の倫理をチェックする
新聞テストとは、自分の行動が新聞に批判的に掲載されても堂々としていられるかというチェック方法だ。
これから自分がする意思決定が、翌日の新聞一面に批判的で賢い記者によって書かれても、家族や友人に胸を張って説明できるか?要するに「恥ずかしくない行動をとれ」ということだ。
このチェック方法が鋭いのは、法律に触れるかどうかよりも厳しい基準になっている点だ。
- 法的にはOKでも信用を失うことがある
- 信用を失うと取り返しがつかない
- 後に利益は回復できても評判は回復しにくい
バークシャー・ハサウェイが長期で強いのは、投資判断の巧さ以前にこの倫理基準を組織に埋め込もうとする姿勢があるから、という見方もできる。
たしかにウォーレン・バフェットに関しては、著名人にしては珍しく悪い噂がない。田舎の質素な家で、質素なものを食べて暮らしているということがよく取り上げられる。
(3)競争優位は作るより守るほうが難しい
バフェットは企業の競争優位を城の堀に例え、Moat(モート)と表現する。そしてそのモートは時間経過とともに劣化しない耐久性があることが重要だ。
そして長期投資において致命的なのは、企業の優位性の源泉が何か分からないまま「良さそう」という雰囲気で保有してしまうこと。このようにして優位性の根拠がきちんと言語化できていないと、崩れ始めたときに判断が遅れる。
企業の競争優位を分析するにあたり、着目すべきは以下の持続性だ。
- 商品価格を値上げできるか
- 顧客が離れにくいか
- 代替が面倒か
- 規模が参入障壁になっているか
このあたりはマイケル・ポーター教授の5フォース分析を学べば参考になるだろう。
(4)誰をヒーローにするかで人生は大体決まる
今回の講演に限らず、バフェットは「ロールモデルを慎重に選べ」とよく語る。人は尊敬する人の言葉遣い、判断、振る舞いに、少しずつ似ていくからだ。
投資に置き換えると、これは情報源の選び方にも直結する。
- 短期で煽る人を見ていると、短期売買の衝動が増える
- 仕組みと確率で語る人を見ていると、判断が落ち着く
- 品格のないサクセスストーリーを追うと、いつか同じ落とし穴に落ちる
長期で残るのは資産だけではなく人格と評判である。
(5)起業家にとって最大の報酬は自分の絵が描けること
バフェットは「創業者にとって最高の報酬は自分の絵が描けること」と語る。絵というのは比喩で、これはつまり自由に作品が作れるということだ。
- 自分がどういう世界を作りたいか
- 何を良しとして、何をやらないか
- どんな顧客に、どう価値を出すか
この選択の連続が、そのまま長期の成果に繋がる。創業者の作品とは社名、商品、ロゴ、カルチャーなどがあたると考えて間違いないだろう。
いつの時代も人を動かすのは裁量と創造だ。
バフェット流は、短期で派手に勝つ方法ではなく、長期で取り返しのつかない負けを避ける方法を重視する。この生き方は投資家だけでなく、事業を作る人やキャリアに悩む人にも効くはずだ。
投資家向けの追加情報
本サイトは株式投資家をターゲットにしているので、必要だと思われる2箇所に補足説明を加えておく。
競争優位の源泉はどこにあるか
1つ目は競争優位について。より理解を深めるために企業の競争優位には以下のような具体例があると知っておきたい。
- 値上げ力:原材料や人件費が上がっても価格転嫁できるか
- スイッチングコスト:顧客にとって商品の乗り換えが面倒で離れにくい状態
- ネットワーク効果:利用者が増えるほどサービス価値が増えること。例えばSNSなど
- 規模の経済:仕入れ・物流・広告単価などは規模が大きいとコストが下がる
- 規制・許認可:参入に時間と手続きが必要で、新規が入りづらいか
新聞テストを投資判断に落とす
新聞テストは自らの行動をチェックする方法だが、投資家としては投資企業のチェックにも使える。
- 不祥事が起きたとき、あなたはその企業を擁護できるか
- 利益の出し方が健全か(粉飾っぽい、顧客に不誠実、強引な販売などがないか)
- 経営者の発言と行動が一貫しているか
不誠実な企業は意外とたくさんあるもので、メッキが剥がれると株価は一気に下落する。
ウォーレン・バフェットが学生に語った5つのことは社会人にとっても学びになる。圧巻の内容だった。



