あまり知られていない話だが、実はウォーレン・バフェットは孫娘を勘当したことがある。ニコル・バフェット は、ウォーレン・バフェットの息子である ピーターに法的に養子縁組されたことで、ウォーレンの孫にあたる立場になった人物である。

問題の発端は番組内での発言

お金について不満を述べてしまった

元はウォーレンと良好な関係だったニコル。ところが2006年、「富裕層と格差」を扱うドキュメンタリー番組「The One Percent」にニコルが出演し、家族の富や自分の立場について公に語ったことが転機になってしまった。

何が問題視されたのか

ニコルは、番組の中で「アートスクールを卒業するまでの学費と生活費をバフェット家に払ってもらいました。でも、それ以降はまったく金銭的な援助はありません」と発言した。

世界的長者の孫が裕福ではない暮らしをしているというのは意外な事実だ。こんな発言をすれば、少なからず教育方針を理解していない視聴者からウォーレン・バフェットに批判の声が届くのは間違いないだろう。

▼ニコル・バフェット。アーティストとして活動し、最近はNFTアートに力を入れている。

独特の価値観をもつウォーレン・バフェットは以下の2つの方針を踏みにじられたと感じたのだろう。

  • 家族と自分のプライバシーを守りたいという思い
  • バフェット家の資産は相続させず、寄付するという思想

きっとニコルに悪意はなかったのだろうが、メディア露出の中で、バフェット家の富について不満ともとれる発言をしたのは事実だ。その結果としてバフェットの強い反発を招いたと報じられている。

決定打になった手紙

確執が表面化した象徴が、ウォーレン・バフェットがニコルに送ったとされる手紙の一節である。Marie Claireなど複数の媒体が同趣旨の引用を掲載している。

I have not emotionally or legally adopted you as a grandchild. 

「私は感情的にも法的にもあなたを孫として養子にしていません」

この文面が意味するのは、法的な関係の否定というより、感情的には家族として扱わないという強烈な線引きである。英語版のWikipediaの「Warren Buffett」にも同趣旨の記述がある。

また、ニコル側はReutersの取材において「出演がきっかけで自分と双子の妹のエリカが勘当同然になった」と語ったと報じられている。

なぜここまで強い反応だったのか

第三者から見ると些細なことに過剰反応したようにも思えるが、ウォーレン・バフェットの立場で捉えるとその論理は一貫している。

  1. バフェットは生前から子どもに巨額の資産を残すことに否定的
  2. 家族の名前と富は本人の実力とは無関係に他人の態度を変えてしまう
  3. 家族が公に語れば、さらに名前が独り歩きし、本人の統制が取れなくなる

つまり、問題の本質はドキュメンタリー番組内の発言ではなく、バフェットが最も嫌う出演の仕方にあったのかもしれない。バフェット家の富を語る語り手としてニコルが表舞台に出たこと自体が間違いだった。

その後はどうなったのか

関係は長く冷えたとされる一方で、近年は和解したという報道や記述がある。例えば、2022年までに和解した旨の記述があるのが確認できる。

ただし、その後の関係の濃淡は外部からは確認しづらい。ピーターとニコルの母は1993年に離婚しているのだから、ウォーレン・バフェットからすればニコルは赤の他人と捉えることもできる。

まとめ

この件は、家族内の揉め事というより、家族の富を公に語ることを極端に嫌う資本家と、格差というテーマの文脈で自分の立場を語った孫の衝突として理解すると分かりやすい。バフェットは、資産の配分だけでなく、物語の主導権も握りたいタイプである。そのルールを破った瞬間に関係が切れたという構図だ。

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