株式市場では、相場が上がればブル(強気相場)、下がればベア(弱気相場)と言われる。投資家なら誰もが耳にする言葉だが、なぜ牛と熊なのかは意外と知られていない。
結論から言うと、由来は複数説あるようだ。ただし、少なくともベアのほうに限っては、かなり筋の通った語源が残っている。
由来を整理してみた
ベアという表現が先。熊の毛皮を売る連中から始まった
語源の中核にあるのは「熊を捕まえる前に熊の毛皮を売るな」という古いことわざである。18世紀のロンドンでは、実物を持たないまま売りを立てる投機家がベアスキン・ジョバー(bearskin jobber)と呼ばれていた。それがやがて短縮されてベアになった、という説明が有力だ。
ここで重要なのは、熊と牛が最初から対の動物として使われていなかった点だ。最初は、捕まえてもいない熊の毛皮を先に売る、つまり存在しないものを売る、という揶揄に近いニュアンスで使われていた。その延長として、価格下落を見込んで先に売る行為(現代で言えば空売り)と結びつき、下落予想の売り手をベアと呼ぶ文脈が固まった。
この系譜は、サウスシー・カンパニーを巡る投機熱狂として知られる サウス・シー・バブルの時代にも登場し、言葉として定着していったとされる。
ブルは後から対比として作られた
ではブルはどうか。こちらはベアほど一次の由来がきれいに一本化されていない。ただ、「ベアが広まった後にそれと対になる存在としてブルが採用された」という説明が一般的だ。
ここでよく語られるのが、攻撃するときにbullは角を上に突き上げ、bearは前足を上から叩き落とす、という動きの比喩である。上昇と下落のイメージとしては非常に分かりやすく、このように理解している人も多いようだ。事実、RBも投資初心者のときに購入した書籍でそう習い、ずっとそのような理解でいた。
他方で、この由来は言葉の成立経路としては断定しづらく、単なる後付けの説明(民間語源)として扱われることもある。
また、bullとbearが並びで広まる過程には、当時の大衆文化(動物を使った娯楽)や、文学作品での対比表現が影響した可能性も指摘されている。例えば アレクサンダー・ポープ の詩でbullとbearが対置される話は、由来を語る際の定番エピソードになっている。
語源の確度でのまとめ
- ベア:ベアスキン・ジョバー由来がかなり強い(熊の毛皮を捕る前に売る、という揶揄から短縮)
- ブル:ベアの対として採用された可能性が高いが、成立経路は複数説あり得る
この非対称性が面白い。ベアは職業的な蔑称から来て、ブルはそれに対抗する旗印として整えられた。だから両者は最初から対等な比喩ではなく、歴史の流れの中でペアになった言葉だ。
投資家への示唆
市場分析と感情は別だ
株式市場の状態をブル、ベアと整理するのは便利だが、同時に感情も整理してしまうのが難点だ。投資家はブルと聞けば強気、ベアと聞けば弱気になってしまう。だが、強気と弱気は投資戦略ではなく、あくまで心理状態なのである。
ウォーレン・バフェットを信奉するノンギャンブリング戦略では、これらの相場用語を自分の行動ルールに直結させるべきではないと考える。正しくは以下のように捉えるべきだろう。
- ブル相場:市場参加者の楽観が積み上がっている局面。いつか崩壊する
- ベア相場:ピンチはチャンス。株価が下がり、期待収益率が改善する好機である
バフェットは資産の一定比率を現金で保有しておき、暴落したときを狙って株を買うスタイルが得意だ。誰もが恐れをなして下落相場から逃げようとするとき、勇猛果敢に買い向かう。長期投資ならばこのやり方で大きな利回りを生むことができるだろう。



