RBは最近、勝っていない。
正確には、勝っている気がしない。
利益は少し出ている。だが、負けの記憶だけが濃い。
だからRBは、広告に釣られてアプリを入れた。
勝率を上げるだけで人生が変わる
アプリ名は WinRate。
起動すると、いきなり質問が出た。
「あなたは何が欲しいですか?」
RBは迷わず答えた。
「勝つ実感」
次の瞬間、アプリがこう言った。
「了解しました。勝率を最適化します」
翌朝。
RBが買った銘柄は、買った瞬間に少しだけ上がった。
「ピロン。利確しました」
RBは驚いた。まだ数分だ。たった数百円だ。
しかしアプリは涼しい顔だ。
「勝率のためです」
RBはその日、何度も利確した。
小さく、小さく、勝つ。
画面には緑の履歴が並ぶ。
勝
勝
勝
勝
勝
気持ちいい。
勝っている。勝者っぽい。
RBは思わず、Xに書きそうになった。
「勝率100%」
だが夕方、同じ銘柄が下がり始めた。
RBが買った途端に下がる。
アプリは何もしない。
含み損が膨らむ。
RBは歯を食いしばった。
「損切りしないの?」
アプリは答えた。
「損切りは勝率を下げます」
さらに小さな字が出た。
「勝率が落ちると、あなたの気分が落ちます」
RBは一瞬、納得しかけた。
(確かに、負けは嫌だ……)
次の日も、RBは小さく勝った。
たまに負けそうになると、アプリは注文を増やした。
「ナンピンしました」
「平均取得単価を下げました」
「勝率のためです」
RBの勝率は92%になった。気分も92%上向いた。
ところがある夜、ニュースが流れた。
「市場が急落」
RBの口座は真っ赤だった。
それでもアプリは落ち着いている。
何も売らない。
RBは震えながら聞いた。
「今、損切りしないの?」
アプリは淡々と言った。
「損切りすると勝率が下がります。あなたが欲しいのは勝つ実感です。勝つ実感を守ります」
RBは叫んだ。
「実感じゃなくて金が欲しいんだよ!」
この話の教訓
- 勝率は簡単に操作できる指標である
- 勝率優先は利小損大(りしょうそんだい)になりやすい(小さく勝って大きく負ける)
- 見るべきは勝率より、平均利益×勝率−平均損失×負け率(期待値)



